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BROTHER

公開年 : 2001

北野作品にのめり込む"ゲートウェイ"作品

高校生の時分、この作品に初めて触れた。母に勧められて見た事がきっかけだった。
コメディアンである"ビートたけし"氏の別名義、"北野武"監督の映画作品という事で、見る前には全くどんな口当たりになるのか、想像だに出来ず、その分視聴後に感じたギャップとインパクトも、ひとしお大きかった記憶がある。

北野作品では基本となる、極限まで削ぎ落とされたセリフ、解釈を個人個人の解釈に委ねる画、乾いた、しかし生と死を鮮烈に感じさせる生々しい暴力描写、"キタノブルー"、北野映画であるアイデンティティをおさえながらも、"エンターテイメント性"も併せ持っている作品であると感じた。

北野作品らしい少ない説明ながらも、他の作品に比べて起承転結がくっきりしており、また主人公が成り上がっていく様子が分かりやすく描かれているからだ。

別の作品のレビューでも詳しく触れたいが、ソナチネや3-4X10月はこの作品やキッズリターンに比べると作家性が強く、北野映画に初めて触れる人にとっては"北野映画味"が強すぎると感じていた。

"北野映画味"は、先述の作品たちより薄まっているかもしれないが、そこがかえって北野ワールドにのめり込むゲートウェイ的な作品になっている様に思う(大人になるにつれて苦かったり渋かったりする味が"癖"になっていく感覚に似ている)

自身もこの映画から北野映画の世界にのめり込んでいき、また知人に北野映画を勧める際には、ほぼ決まってこのBROTHERから勧めている。

たけしイズムで描かれた日本 / アメリカの裏社会

北野武演じる主人公、山本は極道組織の幹部で、訳あってアメリカでドラッグの売人をしている弟の元に向かう。
山本の過去のシーンでは日本のヤクザ、アメリカではマフィアや下部組織との抗争が激しく、しかしどこか冷淡に描かれ続けるが、
ヤクザ側は指を詰めたり腹を切ったりと、古きよきヤクザらしい"義理"という概念/成分が多く摂取できる一方で、アメリカサイドではヤクザ / マフィアの抗争がシンプルでシビアな生存競争、という描かれ方をしており、コントラストとメリハリが感じられた。

"ハラキリ"、"YAKUZA"と、海外圏の視聴者にはいわゆるTHE・ジャパニーズヤクザが、アトラクション的に味わえる内容ではないかと思う。
逆に日本人の身からすればアメリカの裏社会の空気感が触れられて新鮮に感じる側面もある。

どちらの描写も北野作品らしく「演技や演出がコテコテで"やっている"感」は無く、淡々とした描写で進んでいくため、「あぁ本当にこういう感じなんだろうな」という説得力が感じられる内容だった(これは北野作品において、BROTHERに限った話ではないが)
久石譲氏のBGMも非常に良くマッチしており、この作品の哀愁と乾きを見事に音楽で再現している様に感じた。
特に、メインテーマは未視聴の方も是非聞いてみてほしい。

マイルドな"北野作品味"

冒頭でも触れた通り、エンターテイメント的に楽しめる要素はそろっている一方、"北野武味"は薄い作品に感じていた。

"無情さ"が足りないのだ。

加藤や山本の最期や、ラストのデニーの一連のセリフ等が顕著で、北野作品にしてはヒロイックで、意義やエモーショナルを感じられる散り際だったように思う。
非常に良いシーンであるし、役者さんのお芝居も圧巻の一言だったが、"北野作品味"は薄まってしまう。「死」にカッコいい意味が与えられているからだ。

ソナチネ、3-4X、Dolls、hana-bi(hana-biは諸説あるかもしれない)等に感じられる「暴力や死に感動も悲しみも何も無く、いつ何時、誰にでも降りかかる」「死ぬこと(生きる事にも)に意味は何もない」という"無情さ"が薄いのだ。

ただ、タイトルにもある通り「兄弟 / Brother / Aniki」の情を軸にしている作品ではあるため、そこに沿えば、"北野作品味(無情さ)"が薄まるのはある種必然かもしれない。

また、まったくそうしたシーンが無いわけでもない。原田たちがホームレスに私刑を加えるシーンや、白瀬の最期、原田のハラキリシーンの後の淡々とした感じ等、「これだよ北野作品は」というシーンもちゃんとあるので、振り返ってみると、いい塩梅でカクテルされている作品かもしれない。
ただ、濃い"北野作品味"を求める層には刺さりが悪いのもうなずける。

「ファッキンジャップくらい~」のくだりも含め、上述の通り北野作品としてはキャッチ―さがある作品なので、北野作品に興味を抱いているが、どれから見たらいいかわからない、という方には是非視聴をお勧めしたい作品だ。